インフレについて

最近の急な円安

下のチャートの通り、最近急なペースで円安が進んでいます。私はマクロ経済の事は専門家ではないので詳細はよく分かりませんが、いろんな経済記事を見ていると、円安の理由としては、アメリカが金利をどんどん上げようとしている一方で日本はマイナス金利、超低金利を継続しようとしていることが一因であるようです。

日本でついにインフレが起こる?

アメリカが金利を上げている理由は、インフレが激しいからと言うことらしいです。年間ペースで7%とかのインフレが起こっているようです。

見方を変えれば、アメリカの金融当局がやっている事は、現金=ドルの価値がどんどん下がっていくから、ドルの価値を維持する・引き上げるために、ドルにつく金利を以前より高く設定するということなのかと。(「程良いインフレ率」とされている2%あたりを目指して調整している)

ところが、アメリカのインフレはまだ止まっておらず、ドルの価値は引き続き日々下がっているようですが、そこで円安と言う事は、その落ち続けるドルよりも円の方がさらに価値が落ちていると言う事ですから、なんか相当やばいんじゃないかと言う気がしてきています。コロナの前からニューヨークの物価は東京と比べて高すぎると言う話をよく聞いていましたが、コロナの後で、ニューヨークの物価はものすごい勢いで上がったと聞きますし(バイトの時給が50ドルと言う話とか…)、さらに、円安がどんどん進んでいますから、物価差は一層大きく拡大したものと思われます。

また、アメリカに限らず世界的にコロナ対策の政策資金供給とウクライナ戦争の影響でインフレは激しくなっており、この状況からは、輸入物価は大幅に上がるはずで、生活用品の価格はこれから激しく上がっていくことが予想されると思います。(そういう記事を最近よく見ます)

裏を返すと、例えば日本国内でものづくりをして輸出する会社は、今後しばらく価格競争力がかなり高くなるのだろうと思います。例えば「コロナで製造ラインが停止した影響で目先は売上・利益が低下し、株価も暴落したけど、ここから生産が大きく再開していく」ようなメーカーの株などが狙い目かなと思ったりします。

マンション価格のインフレ

実は都内マンション価格は10年前からずっとインフレが起こっています。都内マンション価格はこの10年で、50%から100%上昇した、「インフレした」と思います。そして今後も「インフレし続ける」と思います。

私は仕事柄、マンションデベロッパーの人と会話する機会がよくあります。彼らのマンションマーケットに関する見解は以下の通りです。

  • コロナ以降、2020年後半からは土地の仕入れ価格が上昇した。コロナで景気が悪くなってリーマンショックの頃のように開発土地がたくさん出てくるかと思ったが、結果的には全く出てこなかった。政府が倒産させないようにお金をジャブジャブにしたから、土地を手放す会社がほとんど出なかったのも原因だと思う。
  • 完成している賃貸マンションを買いたいと言う投資家はコロナ後に全く減らなかった。むしろ値段はコロナ前より上がった。ホテル・オフィスにコロナ前ほど投資できなくなったし、かつ、お金をジャブジャブにしたからだと思う。また、分譲マンションの価格も激しく上昇した。テレワークが増えて狭い部屋に住むのが嫌だと言う人が増えたことなどが原因だと思う。そのため、どこのデベロッパーもどんどんマンションを作ろうと考えて、デベロッパー同士で激しい価格競争が起こった。
  • 2022年3月現在、開発用地の仕入れ価格は、感覚的には2020年後半と大体同じ印象。しかし建設コストは大幅に上がってきている。特に鉄の価格の上昇が凄まじい。また、働き方改革の影響で、現場労働者さん達を土日は必ず休ませる必要が出たので、まず工期の長期化でコストアップとなり、また、職人の労働時間がある意味従来の週6日から週5日に減ったからといって、人の年収を6分の5にするわけにもいかないので、実質的に人件費は大幅上昇となっている。
  • 2022に売り出した賃貸マンションは、家賃はコロナ前ほどには設定できていないが、そうしたコストをしっかり値段に乗せ、コロナ前より高い値段で順調に売れている。不動産ファンドや個人向け投資商品などに資金流入が増えており、投資先が足りない。投資家は皆「要求利回りが下がっている」「賃料がそのうち上がると想定して価格設定した」などと言っていた。
  • 東京の家賃については、大きなトレンドとしては、2018年位の水準に戻ったと言う感覚。2014年ごろから家賃相場は大きく上昇し、コロナ直前の2019年がピークだった。細かく見ていくと、2 LDK や3 LDKなどの広い部屋の単価が急上昇し、ワンルームの単価が落ちているので、広い部屋の単価がワンルームの単価よりも高くなると言う「逆転現象」が発生したりしている(これは従来の常識ではあり得なかったこと。)。
  • マンションデベロッパーの開発担当は悩んでいる。というのも、感覚的には広い部屋を作った方が高く単価が取れるように感じるが、過去の実績が全てワンルームの単価の方が高く出ているので、社内説得が難しい。また、港区や千代田区などの都内の特に良い立地について言うと、例えば75平米で1.5億とかいう部屋(坪単価660万円)が出たりして、結果的にはそういうものが飛ぶように売れているが、サラリーマンの担当者からすると、そういう商品がどういう層に響くのかが全くイメージがわかない。なぜ1.5億円払える人が75平米のようなたいして広くない部屋に住むの?とか考えてしまう。おそらく海外の投資家などが、日本の不動産て安いんだなぁと思って買いに来てると言うことなのだろうが。

以上から何か結論を出すのはいろいろ悩ましいですが、東京のマンション価格は、私としては今後も上昇していくとは思います。

インフレ対策としての株への投資

過去10年間、インフレ対策は不動産だけではなく、株でも達成することができました。下に日経平均とPERの過去10年の推移表を貼ります。まず株価だけを見ると、この約10年間で大体3倍ぐらいになっています。年利で12%位ですね。株を買って持っていれば、毎日の値動きにストレスを感じながらも、結果的にはお金を3倍にできた、毎年12%で回せた。(しかもこれとは別に配当もつきます)

逆に言うと、お金の価値が大きく目減りしたこの10年間のインフレを、うまく回避できたと言えるかと思います。

今更ながら、PERは株価収益率(Price Earnings Ratio)のことです。例えば、年に10億の利益を上げる会社の時価総額が200億円なら、PERは20と言うことになります。上の表からは、日経平均株価はこの10年で8000円位のところから30,000円近くにまで上昇しており、3~4倍上昇したことになりますが、PERで見ると、コロナで瞬間的に利益がなくなったタイミングを除いては、ずっとPERで15前後で推移してきたことがわかります。

PERが15倍と言う事は、世の中の投資家は、日経平均への株式投資に100 ÷ 15 = 6.7%の利回りを求めてきたと言うことになります。これはまあまあいい利回りのようにも見えますが、株を持つ事は価格が上がったり下がったりするストレスを感じますし、特に下がる危険を負うと言う事ですから、まぁそれなりに見合ったリターンと言えると思います。歴史的にはPERは15前後でだいたい推移しており、世の中の投資家が急に低い利回りを許容するようになる時代が来ると思いませんから、今後も同じようなバランス感が続くだろうとは思います。

なおこのPER15倍と言うのは、配当払った後かつ前年度の儲けを再投資した後で、その年度でも15になると言うことで、それでも株価は上がっていくことを毎年継続していると言うことになります。

なお2012年頃は民主党政権で先行きが暗く、PERで10~11(利回りで100÷11=9 ~10%)位取れないと、皆株を買わなかったわけです。デフレマインドが前提にあったものと思います。その後アベノミクスが始まり、お金をたくさん刷る方針に変わったので、PERも巡航速度で15くらいまで上がりました。

ちなみに今のアメリカはPER22くらいです。また、1989年12月に日経平均が39,000円になったときのPERは60を超えていたそうです。PERが15なら10,000円以下だったんですね。今のアメリカはバブル気味だと言われていますが、それと比べても3倍近いPER(盛り上がり)だった1989の日本の株価がいかに狂っていたか、と言うことかと。いずれにせよ、今の日本よりも投資家のマインドが前のめりということですね。利益の将来の伸びへの期待感も、1989の日本やアメリカの方が高いのでしょう。

今後インフレでガソリンや鉄の価格が上がったとしても、日本企業は利益が上がらない活動は基本的にしませんから、必ず価格に転嫁しようとします。なので、インフレでも企業の利益は成長し続けますし、それに伴って株価は今後も安定的に上がっていくことになります。なお、日米のPERの差は、このあたりの期待感の差かもしれません。つまり、アメリカの方がガンガン価格転嫁しやすい社会、ということですね。年齢構成や金遣いの荒さ・楽観性考えると、アメリカの方が色々な意味で「若い」ので、そうなるかとは思います。

高齢化とインフレ

日本では高齢者が選挙権で高いシェアを占めており圧倒的な政治力を持っていますので、年金や介護で多くの資金が割り振られていますし、結局なくなりましたが先日、高齢者に一人当たり5000円配ろうかと言う微妙なアイデアが政府内で出ていたり、とても大切に、優先的に扱われています。

一方で、日本の高齢者の多くは、自宅を持っている人はそれなりにいるでしょうが、富裕層を除けば、投資用不動産や株を持っている人、また、住宅ローンが多く残っている人は圧倒的に少ないと思います。現金で貯金を持っている人が多数派と思います。そういう中で、今後インフレが起こって生活費が上昇していった場合、多くの高齢者はついていけずに不満を持つはずです。インフレによる投資用不動産や株のキャピタルゲインも得られないし、住宅ローンの実質的な目減りもエンジョイできないため。

そうすると政府の対応は、年金を増やすことや、介護の補助金を上げることになるはずです。しかしそうすると、金をジャブジャブにすると言う事ですから、円安とインフレはさらに加速するでしょう。結果、ばらまき分がある意味相殺されて、あまり生活は楽にならないはずです。

ちなみに10年位前には、当時リーマンショック等で円高が大きく進んだ影響もあり、「将来の高齢者は、日本人が少子化で介護の担い手が減る影響で、介護人材に発展途上国の人が増えるだろうことに備えて、東南アジアの言語を勉強していくおくことが大事なのではないか」と言う笑い話がありましたが、今となっては、あるいはこの先は一層、発展途上国の人材は日本で介護をするよりも中国やアメリカ、シンガポールなどに行った方が高い収入を得られるので、安い賃金で日本の高齢者の介護などしてくれず、お金がない日本の老人にはなかなか辛い未来が待っているかと思います。

マンハッタン島を白人に売った「愚かな」インディアンの話

1626年にマンハッタン島の利権を持っていたインディアンは、今の価値で24ドル相当のショボいアクセサリーでその利権を白人に譲りました。今のマンハッタン島の不動産価値を考えると、とても「愚かな」取引だったように感じられますが、1990年頃のピーターリンチの著書によると、1990年頃のマンハッタン島の不動産価値は約280億ドルで、一方、1626年から24ドルを6%で複利運用していれば約350億ドルぐらいだったようです。つまり、当時の取引はそんなに外した価格感ではなかったと言う事かと思います。あえてインディアンが愚かだったとすると、現金やアクセサリーで資産を持ち続けていた点かと思います。(ちなみに土地を持っていれば家賃が取れますから、この比較は一層不動産投資の方が有利、という話になります)

なぜ日本人は投資をしたがらないのか?

個人的には、以下のようなことが理由だと思います。まあどれも私がどこかで読んだりした説であり、特に証拠もない話なので、話半分に読んでいただく記載かとは思いますが。

  • 1990年前後のバブルで痛い目にあった人が多かった。その結果、投資への心理的嫌悪感が社会全体で強くなった。→羹に懲りて膾を吹くようになっている説
  • 「投資で儲けている人は、汗水流して労働で稼いでいる人よりも人間的に卑しい」と言う日本的価値観がある。多くの大衆小説やドラマでそういう価値観が繰り返し発信されており、経済的に成功していない多くの庶民の読者・視聴者にとっては耳聞こえの良いストーリーなので、心に深く染み込んでいる。また、日本社会の支配者層である裁判官や官僚、大手マスコミ社員等のエリートたちにとっても、「自分たちは労働で稼いでる層」なので、同じく耳なじみの良いストーリーでもある。→集団的洗脳説
  • ここ数年、中国が安価な労働力を活かして世界の工場として大活躍したことや、情報技術やインターネットの普及等により、実質的な生活水準が大きく上がったため、インフレによって自分の持っている現金が実質的には大きく目減りしてきたのに、そこまで没落していると言う感覚がわかなかった。→相殺されて気づかなくなっている説
  • 「日本は長年賃金が上がっていない」と言う指摘があるが、実は実質的には賃金はずっとインフレしてきていた。というのも、日本の大企業は終身雇用で生産性の死ぬほど低いおじさんがたくさんいるが、その人たちの給料は昔からそこまで下がっておらず、一方で世の中はどんどん効率化が進んでいて本来ははるかに高いレベルで仕事をしないといけなかったはずなので、見方を変えれば毎年マーケットバリューとの乖離が拡大し続けていたことになり、結果的には、「実質的に」長年賃上げが起こっていた。しかし表面的には賃金デフレが起こっているかのように見えてしまっていた。→皆実質的なインフレに気づいていない説