ドラフト(5070)の株価考察

ドラフトとは

四季報によれば、オフィスや商業施設、都市開発などの空間設計・施工の大手会社。従業員の約6割がデザイナー。

冒頭の画像は、この会社が手がけるみなとみらいに建設予定の商業施設です。下にもイメージはりますが、とてもおしゃれですね。

一応不動産業界の人である私は、この会社の名前を以前から知っていて、私のイメージでは、この会社はおしゃれオフィスの内装の設計施工をやっている会社と言う感じです。最近流行のシェアオフィスとか。従業員170人もいるんだ。

ホリスティックレポートに、お得意様がサンフロンティア不動産やラサール不動産投資顧問と書かれていました。このあたりの会社が得意とする、ちょっと築年が古くて空室の多くなってしまっているオフィスビルを買ってきて、デザイナーを入れて内装すごくおしゃれにして、家賃を瞬間風速で引き上げて(目先のCF膨らませるの最優先で、持続性のあまりなさそうな妙に高い家賃を払っても良いと言うシェアオフィスとかを連れてくるイメージ)、そのビルをわけわかってない外人投資家とかに高値で転売してボロ儲けする系のディールの、「デザイナーを入れて内装すごくおしゃれにする」パートを担当したりしてているのかなと。

オーナー企業

筆頭株主は代表取締役社長の山下泰樹氏で 38%、第 2 位株主は山下社長の資産管理会社の TDA で 20% 。両者を合計すると 58%くらい。

というかこの山下社長、1981年生まれなので41〜2歳です。若い!当然ここからどんどん大きくしていこうと言う野心に満ち溢れていると思います。中期経営計画によれば、売り上げ成長率は15〜20%を目標にしているようです。2021/12の売上が80億で、2022/12は100億を目指すとのことで、また、長期的には売り上げ300億円を目指すそうです。

株価について

2020/3/17上場。コロナ直撃のタイミングですね。2021/12に8%位増資。その後、2022/4/29現在で629円です。2022/12のEPS予想が60円位なので、 PER10位です。というか売上高成長率よりPERのが低いのでは…激安?時価総額で約63億円。

なんとなく今後の株価を試算してみると…

短期 売上100億・営業利益9億・当期純利益6億→ PER10で時価総額60億

長期 売上300億・営業利益36億・当期純利益20億→ PER20で時価総額400億

なお上で営業利益率9%で置いているのは投資家説明資料の中に「経常利益率、営業利益率は約8パーセントから9パーセントを目標にしている」という社長コメントがあったためです。

とゆうか今時価総額60億円位で、その58%を山下社長が持っていると言う事は、流通株式は30億もないんですね。何年か右肩上がりの成長曲線作れれば、簡単に爆上がりしそうですね。テンバガー狙える?

この会社の強み

ビジネス感覚の乏しい人の多いこの業界にしては珍しく、ビジネス感覚のしっかりした経営方針を持っているようです。

まず、この会社も投資家資料では「高いデザイン力がわが社の競争力の第一の源泉だ」的なことを言っていますが、私はそこじゃないと思っています。私の思うこの会社の強みは以下の点です。

  1. 儲かる仕事を受注しようという基本方針。決算資料に書いてありましたが、「売り上げが10倍の仕事は手間は10倍かからないことが多いので、とにかく大きい仕事を受注したい」的なコメントがありました。大手の設計事務所って、すぐ「社会的意義のある仕事」を薄い利益で請けてしまうイメージあるんですよね。また、零細の設計事務所は足元を見られて激安で使われてるイメージもあります。というか設計とか建築士系の人って、基本的に芸術家なので、利益とか興味ないし(イケてるものを作りたいと言う気持ちが最優先)、商売が下手なんですよね。その点、この会社は商売上手な匂いがします。
  2. 労働集約的かつ日本語力を必要としない仕事を人件費の安い国でやらせる。イメージ画像作成とかの業務は、フィリピンやセルビアとかに拠点を作ってやらせているようです。なんかユニクロみたいですね。シビアで賢い経営者感がします。
  3. 分業を徹底している。これは2つのメリットがあると思います。1つ目は、単純な話ですが業務効率が良くなる。2つ目は、従業員が辞めにくくなる。だって1つの役割ばかりを延々とやっていたらつぶしが効かなくなりますから。少なくともより給料を高くする転職の選択肢は減るでしょう。つまり、安くこき使いやすくなるかと。
  4. こういうデザイン的な業界で働きたい若い人は腐るほどいるので、割安に人を使える。例えば投資家説明資料の中に以下のような記載がありました。採用倍率30倍。超優秀な人材を取れていると思います。

新卒採用人数
2020年 9名
2021年 13名
2022年 13名予定 (近年の採用倍率は約30倍)

この会社の弱み

2021/12/7に増資と社長の持ち株売却の発表がありました。そこから株価はずるずる下げ基調になっていました。その少し前、2021/11/1に、強気の中期型計画と株主優待の新設(クオカード笑)があり、その直後の話だったので、2021/12/半ばのYahoo!掲示板は激しく荒れています(笑)

まぁ、個人投資家からすると「不誠実だ!」と怒りたいところかもしれませんが、でもこの山下社長は株価を高く維持したいと言う気持ちは引き続き強いでしょうし、これ以上の株を売ってしまうと過半数割れしてしまうのでそこまでするとも思えず、素直にオーナー企業株(経営者株価を上げることに熱心な株)だと見ておけば良いのではないでしょうか。

増資資金の使い道は、このページの冒頭にあるおしゃれな建物の建設、5億円ちょっとの建設資金、他です。会社のブランド価値の向上が目的とかいろいろ書いてますが、なんか社長の道楽感がありますね(笑) 自分の株を売って作った資金も、何かそっち系で使うのかなぁ。

ここの社長も商売上手ではありながらも、建築家、アーティストとしての作品制作欲のようなものがあって、必ずしも経済合理性だけではない判断をしてしまうところがあるのかも。例えば金融業界、介護業界、物流業界のような、お金に関して極めて現実的・資本主義的な考え方をする経営者が多い業界とは、やはり少し違う感じがします。

でもまぁこういうちょっと面白そうなプロジェクトをやるのは、仕事をとるきっかけでもあるのでしょうし(セイムボートでお金出しますと)、従業員のモチベーションアップにもつながるでしょうし、別にお金を捨てるわけではなくて家賃も多少入ってくるんでしょうし(でも銀行は貸してくれなかったんだろうな…(笑))、社長自身が今後もどんどん仕事しようという気持ちの原動力にもなる気がしますから、多少やってもいいような気がします。(金額的には、この会社の規模からすればギリギリ「多少」って感じがします)

あと、ここは労働集約的な事業であるため、利益は等差数列的にしか増えていかないと思います。つまり、売り上げが伸びていくときに、利益率が劇的に改善していくような事は考えにくいかと。

業界の環境

今後も不動産マーケットの加熱は続くだろうと私は想定しているので、この業界の仕事も引き続きたくさんあると思います。

特に、上で書いた「お得意様」のサンフロンティアやラサールの仕事、外見だけパリッとさせて転売してしまう系の案件は、今後も案件数はたくさんあるでしょうし、やること自体は大して難易度が高くないので(ワンパターン)、とても利益効率が高そうです。多分クライアントから「コスト下げまくってペラペラに見た目だけ超かっこよく作れ」とか言われるので、老舗の大手設計事務所はプライドがあって受注したがらない気もしますが(そこまで商売に走らなくてもやっていけるでしょうし)、発注者からしたらそれなりに大手に任せないと不安もあるので、程良いポジションを築いてこういう仕事をどんどんとっていくと、すごく儲かりそうです。