【書評】わが投資術 市場は誰に微笑むか

今回はブログ記事というか、ほぼ、気に入った箇所のメモ書きしてるだけです。

面白かった箇所の抜粋

投資の第一歩は「常識を疑う」こと

カウンターイントゥイティブ=人々が当然だと思っていることと、現実が違うというような意味。株式投資にとってはとてもとても大事な概念です。

最近マクロ経済学の教科書を読んだのですが、私が学生時代に読んだ教科書とは全く違っていました。基本、昔のマクロ経済理論がデタラメだったと思います。今の理論もかなり怪しいのですが。そもそもマクロ経済学は学問と呼べるのか。マクロ経済学とは、基本的に「人間がどう行動するか」ということですが、同じ状況に置かれても、人間は過去の経験から学びます。結果として同じことが繰り返されるとは限らないわけです。

基本的には有料な情報源を買う必要はないが、何か1つ選べと言われたら、東洋経済の会社四季報だと答えます。月1100円のベーシックプランで充分。

週刊ダイヤモンドには、足で取材したあっぱれと思える素晴らしい特集が多い。会社よりのヨイショ記事などは乗らない。

もしある割安な小型株を、あなたが「これは成長株だ」と思って投資して、結果的に実は違った場合でも、あなたが損する可能性は低いと思います。なぜなら、そんな割安株が成長すると思っている人なんてほとんどいませんから。(中略)とにかく値上がりした株はできるだけ買うのを避けるのが私の基本的な考え方です。

その企業をフォローしているアナリストの数が多ければ多いほど、異変が起こった時、アナリストに察知されやすくなり、結果的にアナリストに出し抜かれる確率が高くなります。結果として投資は儲けにくくなります。私はソニーの株価が将来どうなるか全く判りません。なぜならあまりに事業が多すぎて全体としてどうなるか全く読めないからです。アナリストのフォローも多いですし。1年間熱心に勉強したところで、儲けにはつながらないでしょう。だからそういう株のリサーチは原則しないんです。私のソニーに関する知識はほぼゼロです。時間は有限です。何かに時間を使いたければ、何かに時間を使うのやめなければいけません。

私の結論は「個人投資家が日本の大型株に分散投資をしたいのなら、トピックスのETFが1番合理的」ということになります。

40年前の野村証券の営業マンは顧客を儲けさせたと言う自慢は一切しませんでした。むしろ、顧客にどれだけ損をさせたかと、どれだけ部下を辞めさせたかを自慢していました。私はこれに強い違和感を覚えていました。野村の営業マン達も最初は違和感があったのだろうと思いますが、研修や先輩の教育やらで、徐々に当たり前になってたのでしょう。

ボラテリティ(過去の基準価格の変動幅)をリスクだと勘違いしている金融関係者が多すぎます。

数ある株価算出の方法の中で、私が1番重視する指標がPERですが、「将来の利益から割り出した適正なPER」だけで株式の価値を計測することはできません。会社のバランスシート上の資産や借金を含めて計算していかないといけないです。

今の日本の長期金利を前提にすると、PERが10倍以下の株はそうじて信じられない位割安。長期金利(10年、国債の利回り)が、仮に3%まで上昇してもまだ充分割安。

IPOで上場してきたばかりの会社について。IPO銘柄に投資してきたベンチャーキャピタルは、自分たちの利益を極大化するために、「できるだけ利益が大きく出ていて、しかも成長している」ように、見せかけることができる時期に上場させようとします。

我々の戦略は、割安な小型株の中から「割安な小型成長株」を探すということです。それなりに手間がかかりますが、これが日本の株式市場で1番儲けやすく、しかも大きく儲ける方法です。数が少ないですが、株価がとっても安く放置されている銘柄が中にはあるのです。

長期的な成長性を見抜くポイントで圧倒的に大事なのが、「経営者がその企業を成長させる強い意思を持っているか」です。

割安小型成長株の醍醐味を満喫するためには、多少間違いがあってもいいから早い段階で買う、です。成長したのを見届けてから買うのではなくて、成長を予想して買うのです。成長を見届けた後からでは、既に株価は上がってしまっています。

株式投資に才能などありません。人間を3種類に分けてみましょう。1自分の犯した間違いから学ぶ人、2他人の間違いを他人事だと思わず自分事として学ぶ人、3、自分の間違いから学ばない人。ギャンブル依存症な人とかは3なのでしょう。2の人は理想的なのですが、ほとんど存在しないと思います。(中略) 複数の銘柄を買って、その中から儲かる銘柄も儲からない銘柄も出てくるはずなので、そこで相場の感覚が磨かれるかと思います。才能など関係無く、重要なのは自分の失敗からどれだけ学べるかだけです。

おおざっぱに言って我々が検討する割安株は1000社ほどあり、その中に50社位成長株があると言うイメージです。

マザーズ市場は、1999年の開設から、1度も割安になったことがありません。中身が冴えない割には高いPERの銘柄が多く、最悪の市場です。赤字のバイオ株など、見る価値のない株が多すぎます。(中略)昔は我々もマザーズ市場の会社をフォローしていましたが、最近はほとんど見ていません。

逆張りをすることの特徴の1つは、「株を買うと、最初は決まって損をする」ということです。底値近辺で株を買おうとしたときに、正確に底値である確率はとても低いので。こうした買い方をする人へのアドバイスは2つ。買った後に株価が下落してもくよくよしないこと。また、株価が2割とか3割とか上がった位では売らないこと。

何度も言いますが、企業の成長の源泉はオーナー社長のガッツと能力です。社長の言葉などを見たときに、一般論として、計画に具体性があるほど真剣でやる気があります。

個人投資家の方は、よほど運用資産が大きくなければ、マーケットインパクトと言うコストの悩みが不要なので、割安株の中で、10銘柄ほど成長株っぽい銘柄を探し出して投資すれば良いだけです。

ニトリの似鳥昭雄社長とは、東京で1度だけ1対1でお会いしたことがあります。夕食をオファーしたら、「証券会社や投資家の接待は絶対に受けない」の一点張りで、ようやく1000円以内ならオーケーと言う条件で承諾をいただき、酒も飲まずにスパゲティーを食べました。社長の言葉で印象的なのは、「これだって言う優秀なやつを見つけたら、どこまでも追いかけて、絶対にうちで働いてもらう。それが社長の仕事だ。」私は色々お話を聞いて、この会社は伸び続けると確信しました。

ユニークな経営者という意味で、極め付きはゼンショーの小川社長です。まず玄関を入るとベンチプレスのためのベンチと重そうなバーベルが置いてあります。社長は筋肉マンの胸板を一回り厚くした感じです。話を聞くと東大で学生運動にのめり込んだおかげで就職がままならず何とか牛丼屋で働くことになったそうです。そこでも一悶着あって起業したとか。インタビューと言うよりは一方的に牛丼はいかに優れた食べ物かをまくしたてられて終わりました。株価が上がるのは確実だと思ってすぐに頑張って買いましたが、売り物があまりなくて2億円も買えませんでした。株価はすぐに何倍にもなりました。その後、中期経営計画の発表会に参加した際、投資家は50人ぐらい集まっていました。驚いたのは、5年後の利益計画が強烈だっただけではなく、なんと5年後のPERと予想株価まで示されているのです。とても珍しい中期経営計画でした。またある時、我々は小川社長の訪問を受けました。帰り際にエレベーターの前で私の部下が余計なことを言いました。「実は私もジムで鍛えてるんです」と。私は内心お前の筋肉量じゃ失礼じゃないかと思いましたが、やはり小川社長も腹が立ったようで、なんと私の部下に「おい!胸貸せ!」と言ってラリアットをぶちかましていました。

その会社の強みが成長とともにさらに強くなっていくかもチェックポイント。例えば、マーケットシェアが上がることによって、業界内での競争力が高まっていき、利益率が上がるのであれば、正のフィードバック作用が働いていると言える。

割安小型株の中から成長株を見つけることができた場合、「バリエーションのはしごを上がっていく」ということが起こる。

私は日本の小型株だけで運用するなら、適正な規模は100億円位までだと思います。

突発性の暴落と言うのは、普通は相場がすぐに急反発するので、買うチャンスは一瞬しかありません。コロナのパニックの時も、買いの絶好のチャンスは2020年3月19日の14時から15時までの1時間だけでした。

(コロナの時の話で)人類がどんなに悲惨な目にあおうが、相場をそれを織り込んで暴落したら買いの1択になる。極端な例で言えば、隕石が地球に衝突して、地球が滅びるかもしれないときに、ショートして、実際に地球が滅んでも意味がないでしょう。全員死ぬので。でも、安値で買っておけば、軌道がそれて地球が助かったときに、株価は何倍にもなって大儲けできます。

「落ちてくるナイフは掴むな」と言う株式投資の格言は間違っています。世の中そんなにうまくいくわけがありません。底値付近で買おうと思ったら、落ちてくるナイフをつかまなきゃ。

リーマンショックの時、ジョイントコーポレーションの信用不安説が流れ、それにつられて、ジョイントリートの株価も暴落しました。でもおかしな話なのですよ。リートのスポンサーが倒産しようが、リートの中身自体には無関係なはずです。ジョイントリートの保有するマンションの住人が、ちゃんと賃料を払ってくれれば、価値は損しないはずですから。(ただし、銀行がローンを引き上げないかは注意が必要)

プレサンスコーポレーションは、我々が1番儲けた銘柄です。我々が目をつけた2008年で、PERは5倍でした。この会社は大体毎年20%ずつ増益になるものですから、PER見直しではなくEPSの上昇で株価が上昇したという感じです。結局我々が保有している間、アナリストのコメントはほとんどありませんでした。アナリストによる正式なフォローもゼロでした。大阪のワンルームマンションのデベロッパーですから、無理もありませんが。我々が保有した期間中も、PERが7倍に切り上がった程度だったと思います。この銘柄での儲けは250億円以上でした。

空売りは個人投資家には進めません。そもそも割安小型株に投資していれば、空売りによるヘッジの必要などは無いのです。持っている株が高騰すれば、利食いをすればいいだけですし、株価が下がってしまえば、そこでまた買い増しすればいいだけの話です。

個人投資家は未公開株等は決して買ってはいけません。そもそも、まともな公開株は需要が強いので、出資したいベンチャーキャピタルで溢れています。あなたのところに話が回ってくる未公開株は、基本的に実体のない詐欺ですが、万が一詐欺ではなかったとしても、クズでお金が返ってこないことに変わりありません。さらにタチが悪いのは、価値がゼロでも、相続税の算定の際に、国税が価値ゼロと認めてくれないだろうということです。投資で1億円、そして、相続税でさらに5500万円損するって、バカげていませんか?また、詐欺師のほうはまず詐欺罪には問われません。検察側に騙す意思を立証する義務があるので、ハードルがとても高いためです。

若い人が急速に減っていく日本では、基本的には内需に軸足を置いたビジネスに成長は期待しにくいです。でも全然だめかというとそうでもないでしょう。縮小均衡する市場で、同業他社が撤退することでシェアが上がったり、残存者メリットで利益率が上がったりするケースはあると思います。

日本の建設現場では、建設労働者の高齢化が大問題になっています。人口減少に伴って建設需要はもちろん減るでしょうが、それ以上に供給力が急速に減ることで、建設業の利益率が大きく上昇する可能性だってあると思います。

縮小する市場では、経営統合を進めていくスピードが市場の縮小より早ければ、株として儲かる可能性は、ある程度はあるのです。

感想など

これは名作!何回も読み返すことになりそう。

何人かから、考え方が私にとても似ていると言う光栄なコメントをいただきましたが、「何事も疑って考えてみる必要がある」と言う著者の主張に基づいて再度考えてみると、上の抜粋記事は、すべて私が私の考えに近いところだけをピックアップしてる可能性もありますし、本当にそうなのかなー?と言う気もしたり。まぁいずれにせよ、結局は自分でいちいち考えて判断していくしかないということですね。