長栄とは
京都市伏見区発祥の不動産屋さん。京都最大の不動産管理会社。不動産の管理と所有(賃貸)の二本立てをやっている。不動産仲介(特に売買仲介)や開発業者と比べると、圧倒的に「浮き沈みの少ない」ビジネスをやっている。2021/12に上場。
2021/12 IPOからの推移等
公募 1800円
初値 1656円
現在 1564円 2022/1/31終値 時価総額69.9億円。
公募78万株(14億)、売出46万株(8億)と、供給金額も大きいので、価格は上がりにくくかったと考えられる。
しかもこれ2021/12は上場する銘柄が非常に多く(12月だけで32社もあった。毎年 IPOは90社くらい→普段の4倍くらいか)、上場中止するところも出てきた位だったので、タイミングが非常に悪かった。
というか不動産業のような情報の非対称性ビジネスの世界で大成功した人(長田社長)が、資金調達の必要性無いのにこんな割安に会社を公開してしまうというのは…と思ったりもしましたが、後述しますが、ちゃっかり株価を上げる取り組みをしていたようです。(逆に安心しました)
株価はとても割安
2022年3月期の1株当たり利益(会社予想)は、408円。PERで3.9しかない。ただこれは特別利益込みか。でもそれ以前も300円前後安定的にある感じ。PERで5~6。とても割安。よりハイリスクな売買仲介業者や開発業者と大差ないバリエーションになっている印象。
また別の視点として、タイミングが悪かったIPOのときの初値よりもさらに下がっているので、そこからも割安と考えることもできるか。
配当が二期前で90円、今期で73円。配当利回り4~6%ですね。
うーん、なんだか割安すぎる気がしますね。何か落とし穴がないのかなと思って、いろいろ資料見ましたが、以下のようなページが気になりました。
直近5年で利益が3倍程度急成長している
では、こうして自社保有物件をどんどん増やしていることについて、投資家はどう評価すれば良いのか?
私は株価にとって大幅にプラスになると評価します。
まず、もちろん、管理を受託するだけよりはリスクは増大します。借り入れも増えますし。
しかしこの会社が自社保有物件を増やす事は、我々のような個人投資家や不動産素人の事業会社が余資運用で賃貸アパート・マンションを購入するのとは、全く話が違います。この会社は以下の優位性を持っていますので、リスク・リターン効率が非常に高い投資ができていると思います。
- 賃貸アパート・マンションを運営するプロであるため、目利き能力が高い
- 自分で管理できるので、管理会社に任せて利益を抜かれることがない
- 物件数を増やせば増やすほど、管理事業のスケールメリットが拡大する
- 不動産業界の特徴として、たくさん物件を買っていると言う噂の中心の会社に、良い情報が全て集まる傾向がある。すべての仲介会社がまずは1番に情報持っていくようになるため。
- 個人投資家と違って、たとえ5~10億円位の物件だったとしても、この会社は現金で一括で用意できるはずなので(かつ判断も早いはず)、売り手の足元を見た交渉ができる(例:相続税を払うため早く現金化する必要がある個人売主、今期の赤字転落を回避するために益だしで物件を急いで売りたい事業会社売主、等)
オーナー企業
長田社長がオーナー社長。1949年生まれなので72歳。一代でゼロからここまででかくしてます。管理会社なのにサービス精神がすごく旺盛なのが成功のポイント?「住民向けの無料イベント」とか、ベタですけど定着率上がりそう。従業員に対しても、人たらし能力が高そう。
マイナスポイントは、親族の後継者がいない点。従業員の誰かに継がせるつもりらしい。それも上場の一因か?
まあもし長田社長が90歳まで元気で現役なら、どんどん利益も伸ばせそうですが…でもまあ見た感じ、すごく丈夫そうな感も。仕事に意欲があると、長生きしますしね。
保有物件は京都大阪滋賀愛知が多い
保有物件、特に、ここ数年上場意識して急ピッチで買い進めた以前の物件(2015以前取得の物件が全体の7割を占めます)は、おそらく含み益すごいと思います。理由は…
- 手広く管理をやっていることで賃料相場感は地域トップの知見があるわけで、バカな高値掴みは絶対していないはず。また、「一見冴えない物件だけど確実に埋まる」とか、割安感のあるものしか買ってないはず。
- 売り物件の情報が入ってきやすい。うまくやれば情報が広まる前に抑えられる。
- 日本史上、今より賃貸マンションの取引価格が上がっているタイミングは無いので、過去に買えてる時点で時間軸的には全部割安。
あと、伏見とか滋賀とか、交通の便が良くて割安感があり人口が増えているエリアに多く持っているのも盤石感あります。
また、そもそもですが、ほとんど賃貸マンションしか手を出していないのも素晴らしい。鉄板の安定資産ですね。
強み
結局のところ、やっているビジネスが以下の強みがあるので、強いリーダーがいれば業績は伸び続けると思います。
- 情報の非対称性を活かした不動産業で、長年の知見蓄積がある
- 管理戸数が既に25,000戸あり、スケールメリットの効いたビジネスができている
- 京都エリアでトップシェアの会社なので、ドミナントの強みが発揮できる。かつ、今後も強化できる
- 上がった利益は物件購入で再投資でき、高い利回りで回すことができる
- 不動産をたくさん持っているのでバランスシートが大きいが、工場を持っているメーカーと比較すると、工場はなかなか売り物にならない反面、不動産、特にこの会社がメインで持ってる賃貸マンションは、とても売却しやすい、流動性がとても高い資産であるため、事業リスクが低い。
- 自社物件の管理は自分の会社でできるので、普通の投資家よりも効率が良い運営ができる
- 築古の物件をリフォームして価値を上げる取り組みを多くしているが、管理戸数が多いので工事費のスケールメリットが効く
- おそらく今後も超低金利は続くので、賃貸マンションの新規供給は止まらない。管理の仕事も増える。自社物件を買うときにローンも組みやすい。
- 本拠地の京都の不動産業界は異常に排他的、他所者を嫌うので(大阪とは全く違う)、新規の参入が難しい
京都の友人ヒアリング
- 「伏見区向島では、石を投げれば長栄マンション、と言うほどに長栄の管理物件が多い。誰でも知っている不動産会社。」
- 「長栄の店舗で賃貸の相談をしたことがあったが、ものすごく腰が低く、いつでもお気軽に相談してくださいと言うコメントだった。リピーターは多いと思う。」
- 京都の主要駅の前に必ず店があるイメージ
株価見通し
この会社はキャッシュは毎年どんどん入ってきますし、それを高い目利き力とネットワークで見つけた割安不動産に投資してはどんどん拡大していくスタイルが確立しているので、毎年安定的に成長できると思います。
ちなみに長田社長は、7年で管理戸数2倍を目指すそうです。今の25,000戸から50,000戸にするとのこと。多分実現性高いと思います。なぜなら、もし無理めな目標出すなら、「7年」とか中途半端な数字使わないかと。かつこの社長、インタビューとか見てても株価上げる系のリップサービス全然しない系ですし。あと、上でも書きましたが、この会社は4年間で150億円、資産(→そのまま管理物件になる)を増やした実績があります。もし150億円分の物件を買えば、一部屋の値段が平均500万円とすれば、管理物件は3000戸増えることになります。7年かけて250億円分買えば、管理物件は5000戸増えますね。
ちなみにこの250億円の物件が、保守的に見て6%しか回らなかったとしても、年間の利益は15億円増えます。管理物件の増加も含めれば、20~25億円程度、利益は拡大できるのではないでしょうか。
今の経常利益は15億円程度で、1株当たり利益は300円程度。ここから経常利益が20~25億円程度増えるとすると、一株あたり利益700~800として、PER10~15なら、株価は7000~12000円です。今の4~8倍ですね。将来的に利益の成長スピードの速さを評価されて、PERがもっと跳ね上がる可能性もあると思います。そもそもこの会社の事業リスクの低さからすれば、PER20以上でも全然おかしくはないと思いますが。
不動産オーナー業なので、インフレにも強い銘柄ですね。
リスク
一方で、リスクは以下のような感じかと思います。
- 京阪エリアに巨大地震。まあ土地は残るし、管理収益も多いので、しれてると思いますが。愛知や大阪にも分散して持ってますし。
- 金利が急に上がって返済が苦しくなる。これがこの会社の最大のリスクですね。まぁ不動産会社ですから。なお、金利が上がると保有物件の時価も下がるはずです。しかし今後5年位は、今の超低金利は続くような気がするのですが。