T.S.I(7362)の株価考察

T.S.Iとは?

四季報によれば、「サービス付き高齢者向け住宅「アンジェス」を運営している。また、訪問介護と居宅介護の介護支援サービスを営業している。」とのこと。また、四季報の概要には書いていないが、重要なポイントとして、介護施設のデベロッパー事業もしている。

ちなみに本社は阪急桂駅の前です。会社の名前は「Terminalcare Support Institute」の頭文字と言うことです。

2021/3 IPOからの推移等

公募 2000円

初値 4000円

現在 1736円 2022/1/28終値 時価総額26.5億円。

公募30万株、売り出し10万株、OA6万株なので、供給不足でまあまあ値段が釣り上がりやすい状況だったと思われる。また、会社は7.2億のキャッシュを手に入れている。

足元はマザーズの暴落に巻き込まれて、まあまあいい感じで落ちてきている。ちなみに2021/8の下落は第二四半期発表の影響です。下方修正をしたわけでは無いのですが、なぜか落ち込んでいます。おそらく進捗率が20%位しかなかったから?ここの業績は不動産を売却したタイミングに偏るはずなので、進捗率はあまり意味がないと思います。むしろ進捗率のニュースで値下がりした場合はのむしろ進捗率のニュースで値下がりした場合は、買いの好機だと思います。

介護銘柄は当たると大きい

チャームケア(6062)

2012 IPO。初音の時価総額16億円。今の時価総額400億円。PER25倍くらい。

前にも書きましたが、ここは元々は?やや強気な介護施設運営会社でした。しかし最近、介護ビジネスは不動産デベロッパー兼介護オペレーターとしてアプローチすれば最近の不動産バブル環境ではうまみが大きいと気づき、事業方針をシフトしているところです。

アンビス(7071)

2019 IPO。初値の時価総額469億円。今の時価総額は2200億円。PER40倍くらい。ここはホスピスを運営している会社です。詳細は割愛しますが、経営陣がむちゃくちゃ頭が良いイメージです。

オーナー企業

北山社長以下、北山さんと言う苗字の人が6人大株主にいて、持ち株比率を合計すると60%を超える。株価を上げたいと言うモチベーションは、とてもとても高いはず。

社長の北山さんは1955年生まれで現在66歳。1992年(37歳)から不動産事業を始める。2010年(55歳)の頃に介護型の不動産のニーズが今後高まると感じつつも、建設資金のローンがなかなかつかない中、オペレーターを自分がやれば銀行への説得力が高まると感じ、介護事業会社T.S.Iを創業。

上場会見の記事を読んでいると、とてもシンプルに説明できているのでとても能力が高い人だと思います。

介護オペレーターとデベロッパーの両輪

土地を仕入れて、介護施設を建設して、自分がオペレーターとして入り、収益物件に仕上げて投資家に物件を売却する、と言うビジネスモデルです。とても安定的に儲かるビジネスモデルだと思います。

例えば、賃貸マンションデベロッパーと比べてどう違うのか?と言う見方があると思います。賃貸マンションデベロッパーとの違いは、以下のような感じだと思います。

  1. 自分がオペレーターとして入るので、入居者を埋める必要がありません。賃貸マンションなら、ほぼ全部屋埋まっていないと投資家がなかなか買ってくれませんから、竣工してすぐに売却することができます。それどころか竣工前に売買契約書を結ぶこともできますね。つまり資金効率が圧倒的に良くなります。
  2. 建設資金の10%、国から補助金をもらうことができます。また、竣工後数年間の固定資産税の減免もあります。この減免は売買価格に影響してくる話です。
  3. 賃貸マンションであれば、駅から近くなければなかなか人気が出ませんが、高齢者は通勤がない人が多いので、駅から遠い割安な土地で作ることができます。土地の仕入れの競争も倍率が低くなるはずです。
  4. この会社は、補助金の効率が1番良い30室サイズに特化していて、その分工事費を安く抑えることができています。普通の賃貸マンションデベロッパーであれば、仕入れてくる土地の形状サイズが様々なので、工事費もそこまで効率性は高められません。この記事によれば、大手の会社よりも20から40%割安に作れると言うことです。

競合との差別化

こうしたサービス付き高齢者住宅を作る会社は、大手デベロッパーや大和ハウスなどのハウスメーカーから、中小規模の建設会社など様々だと思いますが、どこがやるにしても、作った後に入ってくれるオペレーターを探す必要があります。その一方で、この会社は自分がオペレーターになれると言うところに圧倒的強みがあります。

自分がオペレーターで、建物を作り、それを転売もする会社は、上場企業ではここかチャームケアしかないと思います。

建築コストについても、この会社ほどにたくさん同一規格で作っている会社は日本にあまりないと思うので、優位性になると思います。この記事によれば、大手の会社よりも20から40%割安に作れると言うことです。

また介護オペレーターとしての競合との比較と言う意味では、上場している介護オペレーターのトップ10で売り上げが1500億円から300億円ほどあります。この会社の売り上げは年間30億円ほどですから、規模では全く勝負になりません。しかし介護オペレーター業界と言うのは、ロングテールといいますか、「高齢者も増えるし介護保険料で儲かりそうだからちょっとやってみるか」程度のノリで参入してくる会社も多い業界・零細事業者が膨大な数のいる業界なので、「上場しているオペレーター会社」というだけで、信用力は別格の水準にあると思います。(入居者からも、物件転売先からも)

そして結局は、この会社のメインビジネスが(おそらく)介護施設の開発・売却にある点を考えると、売却時に買い手のローンがつくかの最も重要なポイント、オペレーターの信用力が高いと言う点が確保されていれば、十分かなと思います。

ちなみに、サービス付き高齢者向け住宅のオペレーターの数は日本で現在3000社程度。1社あたりの平均所有部屋数は56室。なので、ほとんどが零細オペレーターで、1つか2つだけの施設を持っている会社になります。

ドミナント出店している

この会社が滋賀等の特定の地域でドミナントで施設を増やしている点は、とても優れた戦略と思います。なぜなら介護業界というのは人間関係のストレスの多い職場なので、離職率がとても高いのですが、近くに別の施設があると、とりあえずそこに異動して気分転換してみたら?と言うことで離職率を低く抑えることができます。
また、地域内での信用力も向上します。あれだけ多くの施設があるなら入居しても安心だろう、と言う見方をされるはずだからです。

開発事業の数字感の概算

会社説明資料では、以下のような成長戦略が示されています。

ではこれで、いくら儲かるのか?

まずこの会社は、物件を売却するときには基本的には価格を公表していません。なので正確にはいくら儲かっているかは外から分かりません。

しかし土地取得価格については時折公表しています。彦根の土地は3億円程度で買っています。岐阜の土地は2億円程度で買っています。

建物については、坪単価55万円程度で作っていると言う記事があり、また、1施設あたり1000平米以内と言う記事もあります。という事は単純に掛け算で、1.6億円程度になります。

つまり、土地を2~3億で買ってきて、建物を1.6億円で作る。それに諸経費も乗せると、おそらく一件あたり4~5億円で作っているのだと思います。上の計画の通り2022年と2023年で5棟ずつを作るのであれば、20から25億円ずつ投資することになります。開発利益は一般的に1割以上は取る想定でデベロッパーは事業を計画しますし(リスクもあるので、それぐらい取れないならそもそもやらない)、今は超低金利で金余り傾向ですから高く買ってくれる投資家も多いでしょうし、もう少し抜けると思いますので、利益的には2~5億程度抜けるのではないでしょうか。ちなみにここ2年の営業利益は1億前後です。もし時価総額26.5億円の会社がそれだけ利益を急激に伸ばせるとなると、かなりの株価押し上げ要因にはなると思います。

今後の株価はどうなるか

仮に2022年12月期決算で営業利益が3億円出れば、1株当たり利益は150円程度になりそうです。ちなみに2021年12月の会社予想が1番当たり利益85円程度です。そうすると、利益急拡大感が出ますから、その時のマザーズの市況にもよるでしょうけれど、PERで20から40の間で評価されるのではないでしょうか。そうすると、株価としては3000円から6000円の間で値付けがされるものと思います。