セレンディップホールディングスとは
四季報によれば、「事業承継の担い手として、中小ものづくり企業を傘下に収める。短期投資や、経営者エンジニア派遣も行う。」とのこと。
基本的には、後継者のいない製造業の中小企業をM&Aで買って、経営者を送り込み、経営改善をして収益を上げていくビジネスモデル。日本M&Aセンターとかのような仲介業ではなくて、あくまで自己資金で会社を買う。また、企業買収ファンド等と違って、短期の転売を目的としていない。永続的に持ち続けることが前提。
創業の経緯
現会長の高村さん(会計士でもある)が2006年に中部地方で個人でベンチャーキャピタル・コンサル会社を創業。1968生まれなので今は54歳くらい。
2014年に高村さんが静岡のバンデロールと言うパン屋チェーン(売上50億)を買収しようかと考えたときに、もともと友人だった現社長の竹内さんが自分も一緒にやりたいという言う話をして(竹内さんは当時42歳、それまではニフティ、三菱リサーチ、日本オラクルとかで会社員をしていた)、参画。ちなみに竹内社長は1970年生まれなので今は52歳位。
エクイティ資金を半々で出し合い、大半のお金はLBOで調達して、バンデロール社を買収してバリューアップして、10ヶ月で黒字化、12ヶ月後に大企業に会社を売却。そうした企業バリューアップ案件をやったのが1号案件。
その当時、ベンチャーキャピタルに資金を出してもらう選択肢もあったが、自分たちの出資比率があまりに小さくなるので、つまらないので頼まなかったとのこと(下手すると個人保証も求められる?)。
また、LBOで借り入れをしているが、銀行と交渉して個人保証はつけなかったとのこと。もともと話を持ってきたのがバンデロール社のメインバンクであり、何とか再生したいと言う気持ちが強かったのもあり、個人保証をつけずに済んだとのこと。(想像だが、他の事業計画書等もすごく優れていたので通ったのだと思われる)
会長の高村さんと社長の竹内さんの2人が株式を同じ比率(18.9%ずつ)で持っている。
2021/6IPOからの株価推移
公開 1130 →ここから22%ダウン
初値 1656 →ここから47%ダウン
現在 879 2022/1/14終値
時価総額で現在38億円
調達金額は11億円。マーケットに出したのは発行済み株式数の22%位。創業者の株の売り出しはゼロ。上場ゴール感は全くない。
上場の目的は、まずは資金調達と(個人保証も求められないもの)、会社の売却を検討しているオーナーへの信用力を上げたかった、でも上場すると自由度がなくなるしコストもかかるのでデメリットもあるので、するかどうか悩んだとのこと。
企業買収ファンドとの差別化ポイント
セレンディップは、「ファンドに売却するのは嫌だ」と言うニーズに対して、うまくはまることがある模様。
セレンディップは、基本的には買った会社を永続的に保有する前提にしている会社なので、売却を検討しているオーナーからすれば、無茶なバリューアップ(リストラ)をして転売されるリスクがない。
オーナーからすれば、企業買収ファンドに売却すると、高値で売れるかもしれないが、従業員の生活や、取引先との関係をきちんと守ってくれるか怪しい面がある。
もともと会社のオーナーが売却を考えるきっかけは、基本的には後継者不在なので、セレンディップに任せると、その後継経営者を探してもきてくれるので、そこも安心感が生まれる。セレンディップとしては、自前の金を投じるので、当然に必死に優秀な経営者を探してくるモチベーションがある。
セレンディップが「天竜精機」と言う会社をM&Aした経緯が、ガイアの夜明けなどで取り上げられているので、ちゃんと実績のある会社として認知されやすいか。→日本M&Aセンターの実績ホームページ
天竜精機の旧オーナーの芦田氏は、株を全て売却するのではなくて、30%程度手元に残しておくことを選択。将来的に安定的収益源(配当など)を子供たちに財産を残せるメリットも考えたか?そう考えると、安定的・永続的に会社を成長させてくれる会社に会社を渡したいと考えるはず。ちなみに芦田氏には企業買収ファンドからもオファーがあり、そちらの方が提示価格が高かったらしいが、セレンディップを選んだとのこと。
高村会長は20年近く名古屋エリアでM&A関係のビジネスをしているので、名古屋のビジネス街で人脈が十分に築けていると考えられる。名古屋エリアの製造業コミュニティーとか、とても閉鎖的な感じがするので、この辺がとても有利に働きそうな気がする。(参入障壁として)
この会社が主業にしている中小企業のM&Aは国策
後継者不在の中小企業は全国に約130万社、しかし事業売却への抵抗感は強い。そこで中小企業庁は2029年までに現在の20倍の規模、年間6万件までM&A(合併・買収)件数を伸ばそうと、さまざまな税制上の優遇措置を設定。→「中小企業のM&A」は国策に乗った成長産業ということもできる。
なお後継者不在の理由は、必ずしも子供や生え抜きの役員が優秀ではない、とかではなく、後継者が会社の債務の連帯保証をさせられる必要があったりするので、そのような苦労をさせたくないと言う親心も大きい模様。
株価の見通し
以下の理由から、目をつぶってダメ元で100万円ぐらい買っておいたら面白い銘柄と思う。
- 創業者のオーナー企業であり、まだ50代半ば前後と若い。会社を大きくしたい意欲が強い。事業経験も20年近くあり、実績も人脈も豊富。
- 2021年の弱いIPOマーケットで上場しており、かつ、そのIPO価格からさらに大きく株価が下がっている。
- やっている事業が、社会の課題(中小企業の製造業の後継者不足)を解決することに直結している。行政や地銀なども応援しようとするビジネス。
- 参入障壁がそれなりに高い。会計、財務、資金調達、ものづくりの効率化の知見が必要とされる。特に、有利な条件でローンを引くのがとても重要な事業と思われるが、その辺のノウハウが高そう。かつ、「社会的意義、地域貢献度が高い」と銀行の稟議書におそらくかけるので、有利に借入できそう。
- 差別化ができている。世の中には、M&A仲介をやっている会社や、短期転売をしようと言うファンドは既に多くあるが、自己資金で中小企業をどんどん買っていき長期保有する会社というのはそれほどない。
- とにかくお金を集めることが重要になってくる事業だが、今の超金利はとても追い風な事業環境と言える。
- 多分しばらく円安傾向が続くので、製造業には追い風な環境が続くのではないか。
ざっくり今後の事業拡大を計算するとすると、仮に、今後5年で売上げ50億円の会社を10社買うことができて、売上げで500億円、営業利益を30~40億円あげられたとすると、純利益が20億円位となり、PER50で評価されると、時価総額は1000億円まで跳ね上がる。→株価26倍。(資金調達はどうするの?増資して希薄化とかしないか?と言う真っ当な問いは一旦置いておきます)
以下、チャート。下げどまってるような?