はじめに
マンションの値段はこれからも上がるのか?
2021/12現在、このテーマに関しては、世の中には2つの意見があります。
マンションはこれから上がる
マンションはこれから下がる
私は前者の意見を持っています。上がる派です。
ちなみに私はマンションを売る立場の人間ではありませんし、このブログも個人の趣味のブログですから、中立の立場の意見と考えていただいていいと思います。
マンションがこれからも上がる理由
- 超低金利
- 金利がしばらく上がりそうにない
- 超低金利で円安傾向が続くので資材の輸入価格も高止まりし続ける
- 今デベロッパーが土地を仕入れている価格が過去よりも高くなってきている
- 工事をやる職人が高齢化で人手不足
- デベロッパーはアベノミクス以降業績がずっと良かったので恐ろしく内部留保が厚くなり、資金繰り等に全く困っておらず、安く売る理由がない
- 世界的低金利や円安傾向を背景に、中国人を始めとして高く買ってくれる外国人がいくらでもいる
超低金利
最近マンション価格がバブルの頃に追いついた、平均7000万だ、といった記事がありましたが、これで考えると、今の住宅ローン減税も加味すると実質金利はゼロなことに対してバブル期は5パーとか8パーとかの金利がまかり通っていましたから、その差は、初年度で言うと金利だけで350万円だとか560万円の支払いが必要になったと言うことになります。
7000万円を元利均等返済で35年かけて返すと、総返済額は、以下の通りになります。
金利8%:2億800万円 毎月50万円の返済
金利5%:1億4800万円 毎月35万円の返済
金利2%: 9740万円
金利1%:8300万円
以上のように、金利の影響は凄まじいものがあります。
一方で、7000万円を無利息で35年で返済するとすると、初年度の支払いは200万円・毎月16.6万円ですから、バブルの頃(毎月35~50万円)とは半分以下の負担で済むことになります。
(実際には管理費や修繕積立金が必要ですから、毎年の支払いは200万円ではすみませんが、それはバブルの頃も変わりありません)
金利がしばらく上がりそうにない
コロナの影響で国の借金はとてつもなく増えてしまいましたし、金利を上げずに済むのであれば国としては上げない方向で今後も進めたいと考えるはずです。
また仮に金利を上げようとすると、コロナの融資で何とか持ちこたえている地方の企業が大量に倒産し社会不安が起こると言われていますから、地方票が地盤の自民党が阻止する方向に動くはずです。
では金を貸している側から金利を上げろと言われないかと言う疑問があるかもしれませんが、日本は国際的には債権国なので、どちらかと言うと貸している側であり、外国から借金に関して強く要求される展開は考えにくいですし、国内で国債を持っているのは、銀行や生損保、年金基金などの機関投資家なので、政府に対し金利を上げろと要求する展開は考えにくいです。(というか金利を急にあげたら既に持っている国債価格が急落するので、彼らはピンチになりますし)
「超低金利で円安傾向が続くので資材の輸入価格も高止まりし続ける」は、上とセットなので割愛します。
今デベロッパーが土地を仕入れている価格が過去よりも高くなってきている
これは不動産業で働く人間なら誰もが知っている「事実」です。今工事中のどのマンションも、今現在売り出しているマンションより1~2割、場所によっては4~5割と高い値段で売らないと利益が出ない水準で開発用地が仕入れ済、仕入れ中です。
ちなみになぜそんなに土地が高いのかと言うと、土地が足りないからです。良い開発用地があると、デベロッパーはまずはマンションよりも家賃の高いオフィスやホテルを作れないか検討します。なのでマンションに回ってくるのはその後なのです。なお昨今コロナの影響でホテルは死んでますし、オフィスも調子が悪いですが、いずれもマンションに用途転換するのは構造的に至難です。できてもコスト倒れになります。あと、まだまだオフィスの方が面積あたりの家賃は高く取れるのが現状です。
また、コロナで国策として低金利ジャブジャブ政策を進めているので、倒産する会社や苦しくなる会社が少なく、その結果、土地があまり出てこないと言うことも「起こって」いると思います。逆にリーマンショックの頃は土地がたくさん出てきたので、供給量の増加も要因となってマンションの値段も下がりました。あの頃の値段には戻りませんよと言うことです。
工事をやる職人が高齢化で人手不足
建設現場の仕事は、若い人には人気がないのでどんどん高齢化が進んでしまい、給料高くしないと人が来てくれないと言う問題が起こっています。

また、建設現場と言うのは昔は土日も深夜もサービス残業が当たり前の世界でしたが、労務管理が厳しくなった影響でそうした事は認められなくなり、建設工事費に占める人件費が上昇してきています。政府は2024年を目処として労務管理の制度を厳格にしようとしていますから、それ以降は今よりもいっそう工事費が高くなってしまいます。
それ以外にも、昔の現場ではボロボロの足場をずっと使って安全性には目をつぶってコスト優先してきたり、工期を守るために遅い時間まで無理な仕事をさせたりと言うのがまかり通っていましたが、最近はコンプライアンスの問題でそうしたことができないので、コストは上がっていく一方です。
その反面、20年前30年前と比べて建設現場はそれほど技術革新が起こっていませんので、テクノロジー導入・効率性向上によるコストダウンはあまり起きませんでした。
デベロッパーはアベノミクス以降業績がずっと良かったので資金繰り等に全く困っておらず、安く売る理由がない
これについては、デベロッパーと言うのは基本的に原価よりも高くマンションを売ることが仕事・彼らの存在意義なので、原価割れで売るためには差し迫った理由が必要になります。そしてその差し迫った理由というのは、借り入れの返済期限が近づいており持っているマンションを現金化しないと返済ができない、すなわち倒産してしまいかねない、と言う状況に限られます。
リーマンショック以降、大手のデベロッパーは安く仕入れた土地でマンションオフィスを粘り強く作り続けた後、アベノミクスが始まり、原価の2倍3倍で売ることができたので、リーマンショック以前と比べてもはるかに上回る貯金を作ることができました。また、バブルの頃に高値で仕込んで塩漬けにしていたプロジェクトも、その多くが今やバブルの頃より高い値段で売ることができます。実例を挙げると、例えば千葉の幕張などではバブルの頃までは価格・家賃は回復していませんが、より中心部、例えば新宿とかであれば、今の方がバブルのピークより物件価格は上がっています。
そして多くのデベロッパーはバブルの反省から、自社で不動産を保有しすぎないようにしています。具体的には、リートなどを作って外部の投資家の資金で不動産を保有してもらうようにして、自らはそこからフィーを抜くようなビジネスモデルに変化しています。これも毎年物件価格の1%位を抜けるので、結構儲かります。1兆円保有しているリートを傘下に入れていれば、毎年100億抜けるわけなので。
さらには、このご時世に大手のデベロッパーは銀行からいくらでも低金利でお金が追加で借りられます。要は、アベノミクスや超低金利政策によって、日本のデベロッパーは大金持ち会社になってしまったと言うことです。大金持ちなので、マンションを始めとする販売用不動産を安く手放してくれる可能性はもうありません。資金繰りに苦しむ様な状況は、少なくとも今後5年10年は考えられないでしょう。コロナがあと5年10年続いたところで全く揺るがないと思います。(コロナで疲弊するのは金融機関やアパレル、飲食、観光業です)
世界的低金利や円安傾向を背景に、中国人を始めとして高く買ってくれる外国人がいくらでもいる
特に中国人の投資意欲は非常に旺盛で、都内のタワーマンションなど飛ぶように売れています。
中国人富裕層は、中国共産党の海外への資金持ち出し規制がなければもっとハイペースで日本にお金を持ってきたいと考えているので、今後も従来と変わらないか、従来以上のペースでお金が入ってくることが見込まれます。
ちなみに最近ビットコインが高騰していると言うニュースや、中国共産党が仮想通貨への規制を強化していると言うニュースがよく出ていますが、この理由は、中国人が資金持ち出し規制の抜け穴としてビットコインを利用していることが大きな原因と言われています。ビットコインを経由することで、それなりに取引コスト・ロスも発生するはずですが、それでも、どうしてもお金を外に持ち出したいと言う意欲が強い、満足に持ち出しきれていない状況が続いている、ということが推察されます。
日本は人口が減少しているから家は下がる?
日本全体としては人口が減っていても東京の人口は継続的に増えていますし、今後東京の人口が減少に転じたとしても、東京の中心部の人口が増えて周辺部の人口が減ると言う構造に切り替わることが予想されますから、東京の中心部のマンションは結局はニーズが増え続ける構造にあります。
また外国人の流入はこれからも継続的に続きますが、外国人が仕事の無い地方に多く住む事は考えにくく、仕事が多くある東京中心に流入してくるはずですから、それも大きな押上げ要素になるはずです。
高齢化も追い風要因です。やや郊外の戸建に住んでいる高齢者は、生活の不便さに耐えかねて市街地の駅近マンションに買い替えて引っ越す流れがこの10年ほど加速しています。郊外の戸建てに住むには車の運転は必須ですし、マンションよりも家の管理がいろいろ手間です。病院に行くにもわざわざ車に乗る必要があります。
そのようにして郊外の人口は減っていくはずなので、そうするとお店の数もどんどん減っていくはずですから、悪循環となり、どんどん郊外は衰退していきます。
賃金が上昇していないので買える人間がいなくなるから家は下がる?
昔いなかった購入者がどんどん増えていること、例えば中国人を始めとする海外の投資家や、ダブルインカムの夫婦、あるいは独身の高所得層など、まだ買える人がいくらでもいるので、結果的に値段は上がり続けています。
また、賃金が上昇していないと言う意見がいろいろなところでありますが、過去20年間、日本人の実質賃金は上昇していると言う見方もできると思います。
例えば、インターネットが出てきてサービスの値段は下がりましたし、ユニクロや外食産業など低価格商品は価格が低いまま、クオリティーは年々上がってきている感もあります。その分、住宅に回せるお金が増えたと考えることができると思います。