オープンハウス問題
前回記事②でも取り上げましたが、オープンハウスと言う会社は、以下の通り、株価はテンバガーを達成しているものの、PERは延々と低いままです。
こうなってしまった理由を、私は勝手に「オープンハウス問題」と名づけました。具体的にどういう問題かと言うと、あまり言うと怒られる可能性ありますが、以下のような問題です。
- 一般的には、もともとPERが一桁の新興企業が、右肩上がりで利益成長していると(利益率も改善していることが多い/だとなお望ましい)、マーケットからは高く評価され(見直してもらい)、PERは20、30と上昇していく。その時、株価は、「利益の成長率× PERの成長率」で大幅な上昇が期待できる。
- しかし、一部の会社、オープンハウスを代表とする、マーケットから高く評価されない(見直してもらえない)会社は、延々と一桁のPERが継続する。当然、こうした会社は投資先として「PERが上がっていく会社」よりは劣る。
- なぜPERが上がっていかない(見直してもらえない)かと言うと、ここからはあくまで私の推察ですが、ネット上で悪口が書かれることが多いような、少し行儀の悪い会社と思われているから、だと思われる。
オープンハウスがここまで成功した理由
この記事
がとてもわかりやすかったです。
ポイントは、情弱顧客向けに、高価格高利益率商品を、気合で売りつける体制を、安定的に拡大してこれたということかと。記事には書いていませんが、建設業はスケールメリットがききやすい業種でもあります。
こういうビジネスって、強烈に儲かるんですけど、社会に対して何のポジティブなインパクトももたらさない感があるので、PERは上がっていかないってことですよね。サラリーマンファンドマネージャーが「社内説明でプッシュしにくい」銘柄だと思います。中小型株のテンバガーが達成されるタイミングって、そこそこ大きくなった後に、最終的にはサラリーマンファンドマネージャーに割高に買ってもらえる地点だと思うので、その点弱いかなと。
社内から、「見方によれば、大量に変な形の安普請の戸建てを建てて、頭が悪い人を騙して法外な値段で売りつけているし、従業員も低賃金で長時間こき使ってるよね」と指摘されないか、気になると思います。
しかしオープンハウスは投資家にとって優れた会社だった
IPOした2013年当時、株主にとっては、以下の点で、間違いなく優れていました。
- オーナー企業である。
- 利益率が高い。
- 事業拡大の流れにある。スケールメリットがどんどんきいてくる。
- 都内は今となっては、大きな土地はほとんど出てこないので、小さい土地を抑えて戸建てにしてしまうと言うビジネスは実は、拡大余地が大きい。
- ブラック企業である。利益追求を最優先として、従業員には長時間の低賃金労働を要求する。
- やっていることがダサイ。駅前で看板を首からぶら下げて、通る人全員に声をかけて、家を売る。キラキラ感がない。割安に放置されやすい。
結果を振り返って、PERが全く上がらなかったとは言え、利益が驚異的な成長をしたので、株価はしっかりと株主に報いる大上昇をしてきています。
オープンハウス問題を「回避できた」丸和運輸機関
例えば、ブラック企業の多い物流業界でも、私の知る限り最も評判の悪い会社の一つで、丸和運輸機関というのがありますが、ここは以下の通りすごく高いPERで、テンバガーも達成しています。
では、なぜオープンハウス問題を回避できたのでしょうか?ちなみにこの会社の特徴は以下の通りです。
- オーナー企業である。
- 漆黒のブラック企業であるらしい。
- 物流業と言う、比較的スケールメリットのききやすいビジネスである。
- アマゾンの仕事を大手がもうやりたくないと言った時に、ウチが全部やります!と手を挙げて持っていったことで売り上げが爆上がりし、BIGになった。
- 業種がダサめの運輸業なので、IPO当時はPERは11程度だったが、売り上げと利益の成長率が半端ないので、徐々にPERもすごく高くなった。
私の推測ですが、結局のところは、投資家から、オープンハウスのような嫌悪感を持たれなかったことが勝因かと思います。ここが漆黒のブラック企業である事は世間にはあまり知られていないでしょうし、「ECの仕事をしている」と言うと、なんだか最先端の物流ビジネスをやってるかのような雰囲気が出るので、機関投資家のサラリーマンファンドマネージャーが社内説明を意識して銘柄選定するときに、高めのPERを正当化しやすい気がします。
妄想の上の仮説
上で書いた事は、全て私の勝手な見方ですが、その上でさらに仮説を積み重ねるとすると、「オープンハウス問題を回避できるオーナー系漆黒のブラック企業」が投資先としては非常に優れているのではないかと考えます。
もちろん、ブラック企業でなくても成長してれば良いのではないかと言う意見もあるかもしれませんが、そんな会社が利益成長する可能性は私は低いと思います。例えば昔記事を書いた丸八倉庫などは、利益成長の視点で言うと絶望的なオーナー系ホワイト企業だと思います。
ではどう見分けるのか?
と言うと、まぁ、オープンワークのような社員口コミサイトを見るとか、後は、そもそも利益が安定的に伸びている中小型株の企業って、ホワイト企業なんてほぼないと思います。従業員を遊ばせている余裕がないはずなので。
あと、頭の悪いブラック企業も当然ダメだと思います。一定水準以上の利益率が取れていないと、単なるジリ貧の死に向かう(はよ死んだ方が社会のためにもなる)ブラック企業でしかないと思います。
頭の良し悪しの話で言うと、オーナー社長が処理しきれる業態である必要もあると思います。どういうことかと言うと、利益を大きく成長させるために社長に求められる事は、利益率を確保して売り上げを立てることと、従業員を極力低賃金でマネジメントすることだと思うのですが、特に前者が複雑なビジネスで対処が難しい場合は、それだけ成功確率も下がる気がします。外食産業とか物流って、利益の確保はそこまで難解な変数もなく、意欲に満ち溢れたオーナー社長であれば何とか捌ける気がします。また、そっち系で大成功している経営者は、基本的に後者の人のマネジメントの方が得意なケースが多いように思います。
また、一般消費者向けのビジネスをしていると、オープンハウス問題が起こりがちな気がします。口コミで悪口を書かれたりするので。BTOBビジネスが望ましいですね。
丸和運輸機関は、大手物流会社がアマゾンの仕事を断ったところでチャンスをつかみました。世の中の大きな変化で、少しまともではないアクセルの踏み方をする会社が(特に、従業員のキャパシティ・疲弊など知ったことではないと言うメンタリティーのオーナー)、爆発力があると思います。
具体的には?
この会社が「オープンハウス問題を回避できる良い会社」なのではないかと言う事は、上の文脈からは名前を挙げにくいので、この記事では特に言及しないことにします。