アルファパーチェス(7115)⑥ 割安放置の理由

現在、この会社の株価は割安に放置されてると私は考えます。理由はいろいろあると思いますが、私が考えつくのは主に以下の通りです。

2/24終値:855円

そもそも何の会社かわかりにくい。「間接材」って何?

この会社の主力事業MROのキモは、「ロングテールで多数の間接材商品を揃えて販売すること」ですが、そもそも「間接材」って何でしょうか。

「間接材商品をロングテールでホームページで販売する」ビジネスで大成功している有名企業、モノタロウの、サービス立上時の物語(注_モノタロウはもともと住友商事の社内ベンチャー的な会社)のホームページに、以下の通り書いてありましたので引用します。

  • 商社が主に扱う材料などの直接資材は、メガネの製造を例にすると、フレームに使われるプラスチックの原料やレンズのガラスなどである。量産が始まれば、これらの材料は少数のサプライヤーから大量に購入されることになる。
  • 一方、間接資材というのは、メガネ製造の例を使えば、ガラスの研磨材や工場で使われる工具や安全用品、事務所で使われる文具などである。ビジネスを継続するためには必要不可欠ではあるものの、種類は膨大、購買頻度は不定期であり、年間の購入量は限られている。しかし、商品選択、見積価格の比較、発注などのために、現場で働く人はそこに多くの時間を割かなければならない。

間接材というのは、以上のようなアイテムのことを指します。こうした細々としたアイテムをロングテールで、アマゾン的な販売ホームページ(中小企業向け)を作って大成功したのがモノタロウです。株式市場での評価も非常に高いです。アルファパーチェスのIR戦略で「うちはモノタロウに似た、同じような優れた会社です、主要顧客が中小企業ではなく大企業と言うところに違いがあります。」的にアピールネタに使うべき会社です。

が、これまでアルファパーチェスの会社説明等で、この「間接材」の説明さえ一度も見ていないですし、まぁ毎度のことながらIRの意識の低さがやばいなと感じます。

売上高営業利益率が実力より低く見える。

この会社のMROビジネスは、「実質的には在庫リスクを負わずに、顧客から注文があった分だけをサプライヤーから買いつけて即転売する、商品は、そもそもサプライヤーから顧客に送らせるので、自分のところで保管すらしない」と言うものです。

ちなみに「仲介手数料ビジネスにしていない」のは、卸売の機能を提供しているからかと。具体的には、不良品があった場合に自らが売主として矢面に立つ、面倒を引き受けると言うことです。ちなみに、この機能があるので、信用を補完するために上場したと言う経緯があると思います。大企業の発注先選定の社内稟議を想像すると、アルファパーチェスとの取引を開始すると言う事は年間数億円の発注が想定されると書くことに思いますが、それを非上場の会社に任せるというのは、ちょっとハードル高くなりがちと思います。

また、この卸機能提供が仮に無ければ、間を飛ばされて顧客とサプライヤーに直接取引されてしまう懸念もありますが、この機能提供があるらこそ間を飛ばされる懸念はほぼなくなるので、この会社のビジネスモデルの絶妙な強みになっていると思います。

以上のような事業構造から、やたらと売り上げが大きく見えてしまうので、結果的に売上高営業利益率が実力より低く見えてしまう。

ちなみにモノタロウは、在庫リスクをとってます。かつ、膨大な設備投資をして物流センターをたくさん自社保有しています。そこで大量の商品が売れるまでの間、保管しています。こういう点も含めて、実際、アルファパーチェスの方がモノタロウよりビジネスモデルとしては上、かなりスマートだと思います。

自己資本比率が実力より低く見える。

下にバランスシートを貼りますが、この会社の純資産は46億、総資産153億位、負債107億で、自己資本率は30%位です。ぱっと見、いまいちな感じがします。

しかしよく見ると、売掛金(資産)が75億、買掛金(負債)が96億あります。これは、販売先からは(相対的に)さっさと代金を回収している一方で、仕入先には(相対的に)支払いを待たせていることによるギャップです。

これによりキャッシュフローに余裕が出ます。こういう事は、当然、対外的に交渉力が高くないとできません。また、この会社は注文を受けた分だけサプライヤーから「仕入れ」をして、在庫リスクを負わずに販売しているので(モノタロウと違って自社倉庫を持ってすらいない)、この売掛金と買掛金のギャップは、実は特段大きな財務的なリスクになっていません。(例えば、サプライヤーが不良品を大量に販売先に送りつけた後に、検品もせずに支払い(後払い)をしてしまった後に、そのサプライヤーが突如倒産してしまうような事態が起こらないと、回収不能にはなりません。) なのに、「自己資本比率の見え方」という視点で言うと、悪くなる方向に働きます。

仮に、この売掛金と買掛金をバランスシートから除外すると、総資産は153 − 75で78億程度、負債は107 − 96で11億程度となり、純資産は67億位になります。自己資本比率は、67 ÷ 78で80%台後半。これ、急に超優良企業に見えてくるというか。でも別に銀行から運転資金を借金しまくってるわけではないですし。

ちなみに、同様に自己資本比率が実力よりも悪く見えてしまうビジネスモデルとしては、ジャパンワランティーサポートのような保証会社もあります。こういうところは短期的には投資家から「誤解」されやすいので、株価が割安放置されやすく、中長期的には見直しされるチャンスが多い銘柄な気がします。

あと、この売掛金と買掛金のギャップが大きい会社は、そのうち別の記事で説明しようと思いますが、ROICという最近流行の指標がやたらと良くなるので、機関投資家が触れる時価総額(2~300億とか?)になったときに、馬鹿げた高値のバリエーションで評価してもらえる可能性がワンチャンあると思います。

社長のプレゼンがいけてない

この上場の時の社長インタビュー記事で、なんとなく既視感があったのですが、これはジャパンワランティーサポートの時と全く同じですね。つまり、キラキラした夢物語のようなことを全く言わず、延々と、具体的なビジネスの成功に向けた実務的な話をし続けて、結果的に、そこまで細かい話を求めていない個人投資家達に全く響いていないパターンかと思います。(おそらく「間接材って何?よくわからないけど卸売業だし、いまいちな会社っぽいなぁ」とスルーした個人投資家が大半かと思います。)

このインタビュー記事でも多田社長はものすごく有能な経営者と感じますが、一方で、20年前の創業当初からずっとアルファパーチェスにいて、売上が1日20,000円しかなかった零細企業から年商440億まで育ててきた人なので、あまりに細かいところまで正しく把握できているため、こういう説明の仕方になってしまいがちな気がします。(何も知らない人への説明が逆に難しくなる)

BtoBビジネスで、使ったことのある人が世の中に少ない

この辺はよくある話かと思いますが、例えば、テレビCMをよくやっているような会社は、アホな自分の感性を大切にする個人投資家もイメージしやすいので、脳みそ真空のなんとなくの買いがたくさん入るケースは多いかと思いますし、アルファパーチェスはその逆になっているかと思います。