エフビー介護サービス(9220) の株価考察

エフビー介護サービスとは

2022年4月7日、東京証券取引所スタンダード市場に上場。

会社の説明によれば、以下のような事業内容。

「当社グループの事業セグメントは、福祉用具事業と介護事業で形成され、福祉用具事業は、介護 保険法に基づく福祉用具貸与・販売、居宅介護支援、介護事業は、介護付き有料老人ホーム、住宅 型有料老人ホーム、グループホーム、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、デ イサービス、訪問介護、訪問看護、介護保険外サービスで構成されており、地域における介護サー ビスをワンストップで提供しております。」

社長の説明によれば、福祉用具事業で売り上げの4割、利益の6割を稼いでいる。介護事業はその逆で、売り上げの6割、利益の4割を稼いでいる。この辺にこの会社の特徴が表れていると思います。

介護業界について

日本は高齢化がどんどん進んでいるので、高齢者はどんどん増えているが、介護施設で働く人の給料は昔から低く、行政の補助金頼みなところもあって、普通に介護施設を経営するだけではあまり利益が出ない構造に、基本はなっていると思います。

大手の介護事業者はどんどんM&Aをして規模を追求しています。これはもちろんスケールメリットを享受するためです。介護業界がこれから成長するだろうと言う軽い(?)気持ちで参入した零細企業がどんどんM&Aで吸収されていっているのが最近のトレンドです。

が、その反面、大きくなったからといって劇的に利益率が良くなっているわけでもないというか、割と限界があるなと言う印象です。というのも、結局は労働集約的なビジネスなので。例えば小売やメーカーが会社の規模が大きくなったときほどの、仕入れコストを劇的に下げられるとか言うような事は、この業界では起こりにくいのだと思います。介護スタッフの人を100人雇っても10000人雇っても、スケールメリットってそんなにきかないと思うので。超大手とされるケア21でも、営業利益率は5%位だったりします。超大手の介護会社で働いている人の給料がすごくいいと言う話も一切聞きません。

それでも、この業界で高い利益率を出すためにはどうすれば良いのか。いろいろなアイディアがあると思います。

普通にやれば儲からない介護業界で儲ける方法

1.不動産を絡める

例えば以前の記事で書いたTSIホールディングスのように、実質的には不動産屋となり、行政の補助金を限界まで使うことを最優先の設計で超低コスト施設(基本的に木造)をたくさん作っては、自分が入居者となって収益物件に仕上げて、資産家へ高値で転売して稼ぐビジネスモデル。ここは最初から販売用の収益不動産を効率よくたくさん作るために自ら介護事業者になった会社(私はそう思っています)です。ただ、ここは売った後に家賃を払い続けて行かなければなりませんから、若干「タコが自分の足を食べている」感、緩めの自転車操業感のある会社です。しかし、不動産売却益を営業利益に入れることができているので、PLは結構きれいに仕上がっています。また、個人的には、超金利や、介護補助金はしばらく続くと思っていますので、この会社のビジネスモデルが逆流し始める事態はなかなか起こらないと思います。5年10年は安泰ではないかと。

また、チャームケアコーポレーションも似たような発想で、自分が入居した物件を収益不動産として高値で転売することに目をつけ出しています。ここはもともと介護事業がメインで(でも本当の創業当初は建設業だったらしい)、途中で不動産を絡めることに気づいた、学んだパターンだと私は思っています。しかしここの悩みは、自分がテナントとして入った物件を売却した場合、売却益が特別利益に計上されてしまうので、安定的利益的に見せられない点かと思います。(この問題を解決できているTSIは、うまい?)

2.国の制度をうまく利用

あるいはアンビスのように、ホスピスを経営して、介護報酬だけではなく医療報酬でも稼ぐ(国からの補助金を一層うまく引っ張る)と言うビジネスモデル。ちなみにアンビスは介護系上場企業の中でダントツの利益率で、普通は5%位しかないところ、20%位の利益率になっています。時価総額もやたらと大きいです。まぁ医療報酬まで引っ張る補助金頼みのビジネスモデルはいつまで続くのかと言う揶揄する声も一部ではあるようですが…私はそこまで詳しくないのであまりよく分かりませんが。

3.介護用品のレンタルで稼ぐ

介護用品と言うのは、車椅子から介護用ベッド、杖など多岐に渡っていて、高齢者の介護のステージがどんどん変わっていくことから、買わずにレンタル・リースで済ませることが基本となっているアイテムです。

最近結構驚いたことなのですが、私が見たあるレポートによれば、介護用品レンタルの市場規模(ストック)は3500億円もあるそうで、一方で老人ホームなどの「ヘルスケアアセット」を扱うリートの資産規模は5000億円程度らしいので、結構近いレベルにあります。こんなに大きいとは。

そして利益率もとても高いようです。下に社団法人シルバーサービス振興会と言うところが書いたレポートからの抜粋を貼りますが、要するに、情報の非対称性系ビジネスかと。保険や不動産に似たものを感じますね。

この見つけた記事によれば、どちらかと言うと生命保険ぽい感じがします。強いインセンティブを持たされたセールスがいて、人間関係で売り込む要素が強そうな。

ビジネスモデルについて

この会社は、こうした介護用品のレンタル事業をメイン事業としているようです。かつ、自ら介護施設を複数経営していますが、そこで見込み顧客、すなわち高齢者との接点が多く持てるので、介護用品のレンタルをセールスする機会が多く取れるのだと思います。とても優れたビジネスモデルだと思います。

地域展開的には、出身の長野を中心に群馬、埼玉、栃木、新潟など着実に、ドミナントというか、あまりむやみに広げすぎない感じが好印象です。

なぜ上場したのか

上場で調達した資金を使い、新規施設の開業や同業他社のM&A(合併・買収)を進める方針とのこと。

新規施設を多く持てば持てるほど、本業である介護用品のレンタルの見込み顧客は増えていきますし、上場することで社会的信用・認知度が向上するので、新規施設の集客も大きなメリットがあると思います。

オーナー企業

ここは私の好きな、オーナー企業です。自分の保有している株価を上げるために経営をするので、従業員に無駄なことをさせたり、意味のない事業を惰性でたらたらやったりする事はありません。株主になるには優れた会社です。働く場としていいかはよく解りませんが。

柳澤社長以下、柳澤一族、資産管理会社等も含めて、6割位の株を保有しています。上場ゴール感は全くないと思います。というか、新興市場がこれだけ死んでいる環境下で上場しているわけで、「ここから企業成長させて株価はどんどん上げていきたい!」と言うマインドを100%持っていると思います。

株価について

2022年4月7日に以下のような感じでIPOしています。

想定価格1,210円
仮条件1,210円 ~ 1,400円
公募価格1,400円
初値予想(独自)1,400円 ~ 2,000円(3月29日時点)
初値1,561円 (公募価格比+161円 +11.5%)

想定価格1,210円に対して、PER6.47倍、PBR1.66倍

なんか、新興市場の暴落を追い風に(いや、向かい風か。)結構可哀想になってくるレベルでの安値でのIPOになってしまっています。ちなみに2022年4月19日現在の株価は1370円。時価総額で35億円位です。公募割れしてしまっています。

この先の展開はよく分かりませんが、IPOは個人投資家が直後の値上がり狙いとかでファンダメンタル無視でお金を突っ込んできているので、ボラティリティも高いので、パニックでどーんと1200円位まで、あわよくば1000円(PER5.4)とかまで落ちてくれないかなぁ、その頃が買い時かなぁ、なんていうふうに考えています。まぁ今買っても全然安いような気もしますけど、数ヶ月は上場直後のボラティリティーに期待して静観していいような気がします。